蒸着の一つである「PVDコーティング」ですが、PVDコーティングにはどのような種類が存在するのでしょうか。
本コラムでは、PVDコーティングについて詳しく解説します。
本記事を読むことで、PVDコーティングが体系的に理解できます。
設計や開発・購買の方にぜひ読んでいただきたい記事です!
目次
① PVDコーティングとは(Physical vapor deposition)?
⑧ PVDコーティングのことなら加飾技術ナビにお任せください!
PVDコーティングとは(Physical vapor deposition)?

PVD(Physical Vapor Deposition)コーティングとは、物理蒸着法と呼ばれている物理的な成膜方式のことです。
高い真空条件下で製品に硬質の薄膜を物理的に付ける加工のことを言います。
一般的に、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングの3種類に大別されます。
真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングについてそれぞれ解説します。
真空蒸着とは?

真空蒸着とは、高真空(10-2Pa以下)でアルミニウム(Al)や銀(Ag)等の材料を加熱蒸発させて製品に皮膜させる成膜方式のことです。
蒸発源の加熱方式には、抵抗加熱と電子ビーム加熱などがあります。汎用性の高い方式である電子ビーム加熱法が採用されることが多いです。 真空蒸着はガラスやプラスチック製品の製作に用いられることが多いです。
スパッタリングとは?

スパッタリングとは、真空中にアルゴン(Ar)などの活性ガスをイオン化して成膜材料の分子/原子を勢いよく飛ばして製品に皮膜させる成膜方式のことです。
スパッタリングは乾式メッキ法に分類され、素材を液体や高温気体にさらす事なくメッキ処理することが可能です。そのため、塗装やメッキと比べると、環境にやさしい表面処理方法となっております。
また、スパッタリングでは、蒸着では難しい合金(SUSやニッケルクロム合金など)を成膜できるというメリットもあります。
イオンプレーティングとは?

イオンプレーティングとは、真空中で加熱し蒸発させた金属や化合物のガスをイオン化し、製品に叩きつけて皮膜させる方式のことです。真空蒸着にプラズマを加えた処理法です。
イオンプレーティングには様々な方法がありますが、特に中空陰極放電法とアーク蒸発法は、チタン(Ti)系やクロム(Cr)系硬質膜の生成によく用いられています。
イオンプレーティングは他のPVD法と比較して、皮膜の密着性が良いです。そのため、切削工具や金型など精度が求められる製品にもよく利用されています。
各種PVDコーティングの皮膜材料・性能の違い
被膜材料の比較
加工方法 | 被膜材料 |
真空蒸着 | Al,Ag,Au,Ti,Ni,Cu,Cr,Sn,In等 |
スパッタリング | Cr,Cu,Ti,Ag,Pt,Au等 |
イオンプレーティング | Ti,Cr,Al,Ag,Cu等 |
性能の比較
加工方法 | 真空蒸着 | スパッタリング | イオンプレーティング |
密着性 | △ | ○ | ◎ |
つきまわり性 | 蒸発元直行面は○ | ○ | ○ |
膜密度 | △ | ◎ | ◎ |
コーティング外観 | 光沢~半光沢 | 光沢~艶消し | 光沢~艶消し |
ピンホール | △ | ○ | ○ |
各種PVDコーティングのメリット・デメリット
真空蒸着のメリット・デメリット
メリット
①被膜させる速度が比較的早い
②装置(設備)が比較的安価
③膜厚のコントロールがしやすい
④真空チャンバー内で形成するので純度の高い被膜ができる
⑤加工温度が低く対象となる製品への影響が少ない
デメリット
①付着力が小さいので密着が弱い(※イオンアシストでの対策可)
②大物は得意でない(※一部対策方法もある)
③原料によっては被膜時の組成に変化があることがある
スパッタリングのメリット・デメリット
メリット
①付着力が強い
②被膜させる材料の変化が少ない
③融点の低い材料の被膜が可能
④膜厚の調整が時間でできる
⑤大面積への加工が可能
デメリット
①製品の表面状態(凹凸)品には向かない
②成膜速度が遅く加工時間がかかる
③プラズマによって製品に影響を及ぼす可能性がある
④設備やメンテナンスのコストが高い
イオンプレーティングのメリット・デメリット
メリット
①付着力が強い(高密着)
②低温での被膜可能(製品への影響が少ない)
③成膜条件が多様化できる
④反応膜を作れる
⑤合金膜が作成可能
デメリット
①製品の表面状態によっては適さない(凹凸品など)
②樹脂の場合、メッキや蒸着をした後の加工となる(コストが高くなる)
加飾技術ナビの製品事例をご紹介!
続いて、加飾技術ナビで加飾を行った製品事例について、3つご紹介致します。
1.メーターリング(蒸着+塗装)

こちらは、車載用のメーターリングにシルバー蒸着とつや消し塗装を行った事例です。
メーターのディスプレイに反射映り込みがあり、その反射を消したいというご要望でした。
同時に、反射しないようにはするが、外観部であるリング部分には黄色味のある金属調にしたい、というご希望もございました。
当初、対応として側面つや消しと天面シルバー蒸着の2部品をASSYする形で検討しておりましたが、外観部品のためより見栄えを意識したい上にメーター構造上成立しないこともあり、1部品でつや消し塗装とシルバー蒸着を行う必要がありました。このような1部品で異なる工法や色調表現をする際に見切りの問題がよく話題になりますが、当社では塗装冶具に技術力がある協力会社様と進めることで、お客様のご希望通りに蒸着と塗装の加飾を実現できました。
より具体的にお伝えすると、、、
2.カラーブルー着色材+裏面アルミ蒸着

こちらは、日系大手自動車メーカーにおける自動車用シフトレバー下部パネルの加飾事例です。
製造工程としては、PMMAの射出成形(カラーブルー着色材)+裏面アルミ蒸着となります。
お客様が求める特徴は、パネル部分に金属調のブルーと奥行感を表現することです。この2つをクリアする為に当社から材質、色味から加工方法まで総合的な提案を行い、受注に至りました。
今回の事例では、裏面加飾という加工方法を使用しています。裏面加飾を使うことで、、、
3.メーターパネル(2色成形+メッキ)

こちらは、車載用メーターパネルにメッキ処理と蒸着を行った加飾事例です。
素材としてはABS樹脂とポリカーボネート(PC)の2色成形でパネル部分を成形、そちらに併せてプリズムとオーナメントの3部品をASSYした事例でございます。
プリズムはアクリル樹脂(PMMA)で成形して熱溶着でパネルとASSY、オーナメントは蒸着仕様で加飾といたしました。
なお、、、
PVDコーティングのことなら加飾技術ナビにお任せください!
今回はPVDコーティングについてご紹介させていただきました。
PVDコーティングについてご理解いただけましたでしょうか。
PVDコーティングを含めた、プラスチックに意匠性・機能性を付与できる加飾は、自動車部品や住宅設備製品などを中心に様々な製品の製作に用いられています。
みなさまの金属部品やその他製品なども、加飾による生産に工法転換することで、コストダウンや品質向上が見込めます。
本サイト、加飾技術ナビでは、加飾への工法転換を通してVA・VEの実現をご提案しております。
加飾に関して、VA・VE提案・工法転換提案から試作・量産までワンストップで対応が可能な加飾技術ナビまでぜひお問い合わせくださいませ! 最後までお読みいただき、ありがとうございました!